自己愛性パーソナリティ障害(NPD)被害からの回復の過程
- Aira-Life-Coaching
- 2024年9月4日
- 読了時間: 5分
更新日:3月22日

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の被害者が回復に向かう過程には様々な段階があります。
NPDの人から被害にあうと、ターゲットには様々な影響が現れます。
・トラウマボンドが生まれる
・自己肯定感が低くなる
・自分の価値を疑うようになる
・他人の気持ちや意見を自分より優先してしまう
・自己犠牲をしてしまう
・他者を信頼することが難しくなる
・境界線があいまいになる
・うつ状態、不安感、希死念慮、またはPTSDになることもある
などです。
回復の過程は人それぞれですが、共通するプロセスがあると言われています。
①否定
相手に対し違和感を持っているものの、それを虐待だと最初は認識できないことは珍しくありません。大切な人が自分を虐待していると認めることに抵抗を覚え、たまたま相手は機嫌が悪かったのだとか、自分にも悪いところがあったのではと、様々な理由を考え被害を否定します。
②衝撃・混乱
虐待が悪化して否定をすることが難しくなり、認めざるを得ない段階にきます。それは被害者にとって非常にショックなことで、混乱して相手を責めたり自分を責めたり、感情が混乱します。
③虐待の認識
混乱を通り自分は虐待被害者であるということを認識します。他者に相談したりNPDの情報を得たりすることが、このステージにたどり着くきっかけになることが多いです。しかし、まだ相手に対して諦められず、変わってくれるのではないか、このまま関係を継続して良い方向になる可能性もあるのではないか、という希望を捨てきれません。
④別離
相手は変わらないことを認識し、相手から離れる段階です。ここで相手は「愛の爆弾」や「フーバリング」などを用いて被害者を取り戻そうとすることが多いですが、被害者は、これは手法であり惑わされてはいけない、本当に関係を終わらせる必要があると認識します。
⑤グリーフ(怒り、悲しみ、罪悪感などの感情を含む)
通常の関係の終焉にもグリーフの過程はありますが、NPDの人との別れには、通常以上の感情の混乱が生じることが多いです。相手がこの後どう出てくるか恐怖を感じたり、残酷な言動されたり(廃棄の段階)すると、苦痛が増しグリーフケアにより時間がかかります。
⑥情報、知識の収集
NPDについての情報を集め知識を深めたり、同じ被害者の人と繋がったりすることで、自分の置かれた状況を客観的に見れるようになり、虐待を正確に理解することにより、受容へと進みます。
⑦回復(セルフケア、傷の癒し)
この段階でついに被害者は、自分をケアする段階に入ります。虐待によって奪われていた、自分を大切にすること、やりたいこと、必要なもの、そういった自分が望むものを思い出し、それを常に持つ自由を取り戻します。
⑧自己の復元、自立
NPDの被害者は、自分を犠牲にして相手の要求に応えてきたので、自分を優先することに罪悪感を植え付けられてきました。共依存になり、生活の軸が自分ではなく相手になってしまっていた場合も多いです。そこから人生を自分の手に取り戻し、自分を軸にした生活を再び始めていくのがこの段階です。例えば学校に行き直したり、新しい事はじめたりする人もいます。また、周囲の人と健全な人間関係を築いていき始めます。
⑨意味づけ
多くの被害者が回復の過程が進んでくると、NPDの人との過去の関係を冷静に振り返り、そこに何らかの意味を見出そうとします。それは、虐待の経験を肯定したり、虐待者に感謝するということではなく、その経験から自分は何を得たか、ということです。自分と向き合うことでさらに自己理解が進み、今後のより良い人生に活かせるようになった、などと思う人が多いようです。
⑩社会への還元、貢献
多くの被害者は回復ののち、その経験を他者のために使おうとします。NPDについての知識を広めたり、同じような経験をしている人の相談にのったり、そうすることで自己の回復をより進めることができます。
誰もがこの過程のすべてを順番に通るわけではありません。一つのプロセスに長時間かかる場合もあるでしょうし、人によってはすぐに終わる過程もあります。そして多くの場合、このいくつもの過程を行ったり来たりして繰り返しながら、回復へと進んでいきます。
回復は一直線ではありません。順調に進んでいると思ったらある日また落とし穴に落ちたような感覚になることもある。でも、それは後戻りしているわけではないのです。回復の過程はジグザクです。時には少し落ちることもあるのです。その落ちた時に、ああまた戻ってしまった、今までの努力は無駄だったと必要以上に落ち込まないこと。これはただのジグザグの途中なんだ、俯瞰で見たら、右上がりなのだ、という視点をもつことで、様々な過程を乗り越えて回復に向かうことができるでしょう。
虐待の被害者の中にはPTSDになってしまう人もいます。自分ひとりでの回復が難しいと感じたら、医師や心理士などの専門家に助けを求めることを、躊躇しないでください。
NPDの人とトラウマボンドが生じてしまいやすい人は、根底に愛着の問題を抱えている場合が多いです。
幼少期の親との関係により、人とどのように関わるのかという愛着スタイル (安定型・不安型・回避型・無秩序型)が形成されます。
このような愛着スタイルについてもっと深く知りたい方は
動画講座「愛着スタイルと愛着障害」をご覧ください。
各スタイルの特徴や形成される背景など詳しく解説しています。自分のスタイルを知るテスト付きです。きっと回復の手がかりがみつかると思います。
*「NPD被害からの回復の過程」をテーマにXスペースでお話しました。リスナー様からの質問にもお答えしています。聴いてみたい方はこちら
あなたが健やかな明るい未来へ向かいますように。
メンタルヘルス・依存症サポートワーカー/ライフコーチ
堂前宏美
References:
"Stages of Healing After Narcissistic Abuse" Hailey Shafir, Choosing Therapy, 2022
Comments